理事長所信

第54代 理事長 鈴木 健太郎

去 華 就 実
~華やかなものを去り、実に就く~

はじめに

春日部青年会議所は、1965年、愛する郷土の発展を願う青年たちの手で設立されました。この創始の精神は、半世紀以上の時を経てもまったく色あせることなく、現在に至るまで受け継がれてきています。当会が長きにわたり活動を継続してこられたのは、地域の方々のご賛同とご協力の賜です。これまで支えてくださった皆様に、心から感謝を申し上げます。

右肩あがりの人口増加、経済成長の時代は終わり、今、日本は、人口減少の問題に直面しています。そして、この問題は、私たちの住むまちにとっても他人事ではありません。たとえば、春日部市は、女性の年齢別出生率、社会移動率が現状のまま推移すると、2060年には人口が半減してしまうのだそうです。
人口が急激に減少すれば、労働力が不足し、経済は衰退します。そして、税収は減り、現在私たちが当然のように享受している行政サービスも受けられなくなるかもしれません。また、若年層の人口比率が上向かなければ、社会保障費等の負担は増えるばかりです。しかし、私たちは、こんな暗い未来を今の子どもたちに引き継ぐわけにはいきません。

人口減少問題は、社会全般に関わることから、その解決には、産官学金労言の連携による総合的な取り組みが不可欠です。ただ、青年会議所にしかできないこともあります。それは、「人と人のふれあいが生み出す豊かな地域体験」の提供です(ここにいう「ふれあい」は、暖かく、血の通ったものでなければなりません。そのためには、多くの智恵と熱い情熱が必要とされます。その手間をいとわず、真正面から請け負えるのは、もっとも体力・気力が充実した青年期にあり、明るい豊かな社会を標榜する私たちをおいてほかにありません。これが、青年会議所にしかできないとする所以です。)。こうした体験は、人々の記憶の底にとどまり、いつの日か、このまちに対する愛着となってよみがえることでしょう。そして、この愛着こそが、「このまちに残る」、「このまちへ戻る」という選択につながるのです。
だからこそ、私たちは、地域の方々に、その心をつかんで離さない、豊かな地域体験を提供していきましょう。

ただ、人々の心をつかもうと思うなら、まずは、私たち自身が襟を正さなければなりません。なぜなら、人は、共感と信頼のない者の声に耳を傾けることはしないからです。そして、共感と信頼は、華やかなものから生まれるのではなく、当たり前のことを馬鹿にしないで一つひとつ丁寧に行う「実に就く」姿勢から生まれるのではないでしょうか。
私は、本年、『去華就実~華やかなものを去り、実に就く~』をスローガンとして掲げ、地域の方々から共感と信頼を得られる組織づくりを目指します。

故郷こそ、もっとも輝ける場所

人口減少が進む社会で、何よりも必要なのは若者の存在です。しかし、日本には、「最後は花の都で」という価値観があり、若者たちは、進学や就職をきっかけに一旦まちを出て都会に行ってしまうと、あまり故郷に戻ってくることはありません。他方で、欧米では、そのような発想が希薄で、むしろ、都会の学校で学んで、その経験・知見を故郷に帰って生かそうと考える人が多いのだそうです。

若者に、このまちに残り、または戻るという選択をしてもらうためには、「最後は花の都で」という価値観を転換させなければなりません。そのためには、子どもの頃から、もっと故郷の魅力に触れ、故郷が抱える問題を知り、そして、故郷の将来を真剣に考える機会が必要なのではないでしょうか。そういった経験を積み重ねることで、彼らは、自分がこのまちの一員であることをつよく意識するようになり、やがて、故郷に対する使命感を抱くようになるのです。
若者に、「故郷こそ、自分がもっとも輝ける場所」と認識してもらえるよう、私たちは、このまちの子どもたちに、「豊かな地域体験」を提供し続けていきます。

まちの将来の担い手のために

子どもは、親にとっては言うまでもなく大切な存在ですが、地域にとっても宝です。なぜなら、上で述べたとおり、彼らが、このまちに残り、または戻るようになれば、一人ひとりが、まちの将来を支える担い手となりうるからです。したがって、親にも、そして地域にも、子どもを社会全体で育てていくという視点が必要なのではないでしょうか。

昨今の子どもたちは、暇があればすぐにビデオゲーム機を取り出し、仲間と集まっても、目と目を合わせず、ゲーム機の画面だけを見つめているという姿をよく見かけます。ビデオゲームの魅力やそれを通じたコミュニケーション自体を否定するつもりはありませんが、相手と目を合わせ、その感情を読み取り、また、自分の気持ちを伝えるという「人間同士のコミュニケーション」の訓練がおざなりになっているのではないかと心配しています。

そこで、私たちは、この地域が将来にわたって人間味と活力のあふれる元気なまちでいられるよう、「人間同士のコミュニケーション」の大切さをよく知る大人として、子どもたちが自然とそれを学び、身につけられるような機会を提供していきます。

世界を知ろう、日本を知ろう、このまちを知ろう

先輩方が苦労して開拓し積み上げてこられたパサディナ青年会議所との友好関係は、私たちにとってはもちろん、このまちにとっても、かけがえのない財産です。私たちは、まず、こうした恵まれた環境に感謝するとともに、その財産を大切に守り、後輩たちに引き継いでいかなければなりません。

アメリカ第一主義を公約として掲げるトランプ大統領の誕生やイギリス国民によるEU離脱の判断に、今、世界が揺れています。これらの出来事は、これまで絶対視されてきたグローバル化のトレンドに逆行するもので、あたかも、私たちが追求してきた「地域社会の国際化」という目的をも否定するかのようにも思えます。

しかし、実際は、今後ますます「地域社会の国際化」は重要なものになっていくと考えます。なぜなら、価値観の多様化が進んだ世界においては、各国の関係はより複雑化し、それぞれが、局面ごとに、自己責任の判断を迫られる場面が増えるからです。その際にもっとも大切なのは、相手のことをよく知ることです。
したがって、私たちは、よりいっそう地域社会の国際化を推し進めるべく、地域の若者たちに、世界の友人たちがどのような価値観をもっているのか、肌で感じることのできる機会を提供していきたいと思います。
そして、相手を知る前提として、まずは私たち自身が、しっかりと日本を、このまちを知ることができるような学びの機会も設けます。

まだ見ぬ仲間たちへ向けて

この会に所属する以上、私たちには、会員としての重要な使命があります。それは、この会の未来のため、また、このまちの未来のため、まだ見ぬ仲間たちに、「青年としての英知と勇気と情熱」を引き継いでいくことです。
人口減少が進む社会において、今後、さまざまな現実的な問題が噴出してくることが予想されます。これまでの常識が通用しないような厳しい情勢の中で、希望となるのは青年の力です。したがって、このまちにおいても、青年の情熱の炎を絶やしてはいけません。

そのために、私たちがとるべき行動はひとつです。それは、社会に「奉仕」する運動の過程にある「修練」によって己を磨くことです。輝きを放つ人の言葉には力があります。そして、ひとは、その輝きに魅了され、自然と集うものではないでしょうか。
私は、会員が、お互いを信じ、本気でぶつかっていける環境を作ることが、自分の最大の仕事であると思っています。そして、そこで生まれた「熱」が、まだ見ぬ仲間たちの心を突き動かす原動力になると信じています。

「会議」を大切にする

青年会議所の名のとおり、私たちは、「会議」を大切にする組織です。大きな事業も、すべては会議から始まります。一つひとつの会議を丁寧にできずに、その先にある事業が大きな成功を収めることはありません。私たちの組織には、定款をはじめとする「会議」に関する数々のルールがあり、それに基づいた運営が、組織としての規律を担保しています。また、私たちメンバーも、これらのルールを遵守する過程の中で成長していきます。ですから、私たちは、決してこの「会議」をないがしろにしてはいけないのです。

ただ、勘違いしてはいけないのは、単に長い時間をかけて会議をすることが、「会議を大切にする」ということではありません。春日部青年会議所には、総会、理事会、委員会等、さまざまな種類の会議がありますが、それぞれに異なる意味があります。そして、そこに参加する者は、会議の目的を達成するため、しっかりと己の役割を果たさなければなりません。そうでなければ、いくら時間があっても足りないし、また、せっかく多くの時間をかけても、そこに個人の成長はないのです。

今、私たちは、「会議」を大切にできているでしょうか。メンバーの皆さんにおいては、まさに「実に就く」姿勢で、一つひとつの会議に臨んでいただきたいと切に願います。そして、私は、限りある時間をより実り多きものとするために、思考停止に陥ることなく、合理的な会議の仕組みづくりを進めてまいります。

結びに

人口減少問題をはじめとする社会問題の多くは、多面的で、それぞれの原因が根深く、その解決は容易ではありません。しかし、大きな壁を乗り越えるための方法は、小さな成果を積み上げていくこと以外にありえないのです。
そうであれば、まずは、目の前の一歩を踏みだそうではありませんか。

一年ごとに役職が変わる青年会議所においては、成果の積み上げがしにくいとも言われます。しかし、それは、皆さんの考え方次第だと思うのです。当たり前のことを一つひとつ馬鹿にしないで丁寧に行う「実に就く」姿勢は、必ずや、メンバーや会に確実な成長をもたらします。そしてそれは、組織図がどう変わろうと、一年間で消えるものではありません。そういった小さな成長の積み重ねが、自然と大きな成果へとつながるのです。それぞれの運動・活動を、この一年だけのためのものと捉えず、全てが将来の自分、そして将来の春日部青年会議所につながるものと考え、一つひとつ丁寧に取り組んでいきましょう。

一年間、どうぞよろしくお願いいたします。

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